「スーパーチョップス奏法」は1990年頃でしょうか、日本でもジェローム・カレが来日し大デモンストレーションを実施したので影響されたプレイヤーも多かったと思います。
私も現役バリバリの頃だったので当時の盛り上がりはよく覚えています。
ただ、正直当時より暫く評判は良くなかった記憶しかありません(あくまで記憶です)
いったい何故そのような風評になってしまったのか。
そこには、いろいろと誤解を招く様々な要因も実際にありました。
本編では、その根拠についても具体的に触れていきます。
こんにちは還暦過ぎラッパのきのじーです。
20年前に現役を退き、トランペットを触るのも8年ぶりというこの頃です。
初心・中級者にわかりやすくトランペット奏法を解説します。
前回のトランペットのピボット奏法って良いの悪いの?誰がやってるに続き、今回は「スーパーチョップス奏法」について
前回の記事はこちら↓
この記事を読んでいるトランぺッターのあなたが、
「スーパーチョップス奏法」ってどんな吹き方?、それはテクニックの為になるの?どんなプレイヤーが実践してるの?
など々の疑問や興味があれば、なんらかの参考になるかも知れません。
今回の記事内容
- スーパーチョップス奏法|ジェローム・カレの教えと誤解
- ジェローム・カレのデモンストレーションが仇に?
- スーパーチョップス奏法の本質と真実
✅この記事の信頼性
プロフィールにもある通り、自衛隊音楽隊を退職後は、テレビ歌番ビッグバンドやタレントバックのサポート、テーマパークなどで吹いていました。「スーパーチョップス奏法」は、「あ、これわたしだわ」など既に近い吹き方を、何気なく実践しているプレイヤーも少なくないかもしれません。
私も、奏法の仕組みの一部では似たようなコトを実践しています。
この記事を読み終えると、「スーパーチョップス奏法」が唱えるトランペットの吹き方があなたの奏法の何に役立つのか、がわかります。
また、この奏法の唱える本質に迫ることにより、トランペット奏法論の広さを再認識することもできるでしょう。
それでは、最後まで、じっくりとおつきあいください。
もくじ
スーパーチョップス奏法|ジェローム・カレの教えと誤解
最初に、誤解を恐れずにまず伝えたい事があります。
過去から現在に至るまで、素晴らしいトランぺッターのレジェンド達が伝え提唱・継承してきたあらゆる奏法。
それは、一部の隙も無く正しく伝え教えられてきたとは言い難い、ということ。
前回の「ピボット奏法」もしかり、マジオやクラウド・ゴードンも勿論例外ではありません。
第一人者として認められた弟子の伝道師たちですら、のちに本家とトラブルを起こすことが珍しくはありませんでした。
ジェローム・カレのスーパーチョップス日本人初の認定クリニシャンの方も「考えの相違」で随分苦しまれたと記しています。
まず、誤解の一つにはジェローム・カレのスーパーチョップス奏法は、ハイトーンを楽に出すための奏法では決して無いということです。
ジェローム・カレのデモンストレーションが仇に?
数々の誤解の要因として、ジェローム・カレのデモンストレーションが仇になった可能性もあります。
私は直接クリニック等を受けたことはありませんが、当時の評判として、このような話を仲間のトランぺッターからよく聞きました。
・大きな説得力のある音でハイノートを吹きまくる。
・その分、素人受けはするかもしれないが、譜面で吹いたらどうなのだろう。
・小さな音でのアプローチやクラシック的な音の表現はどうなの?
以上から、失礼ながら「ハッタリだよ」という意見も少なくありませんでした。
次の動画をちょっと見てください。
ある意味、そんな意見が出る理由のヒントになるかも知れません。
Tp122 スーパー・チョップス奏法
※YARUNARA888チャンネル様から引用
いかが印象持たれましたか。
アンブシャに一貫性がなく、特にペダルトーンでは完全に口を変えるWアンブシャに見えます。
また、ハイトーンを吹く外見上からは彼が提唱する上歯歯茎の位置まで下唇が上がっているようにも見えません。
(どうでしょう?)
しかし、ハリージェームスなどはスーパー・チョップス奏法っぽく見えます。
また、サンドバルなどは奏法・口を変えずに音階でペダルCからハイC~まで見事に吹いていますね。
スーパーチョップス奏法は息の流れ・ブレスコントロールがまずは大事なのでは
このようなデモンストレーションは初心・中級者のトランぺッター達には誤解を招きやすいと思います。
まずは、息の流れ・ブレスコントロールができてこそのスーパーチョップスではないかと。
並行して、もしくは息の流れ・ブレスコントロールの重大性をとことんトレーニングに取り入れてのスーパーチョップスのアプローチを考えていくべきでは。。
とも個人的には思います。
以上を踏まえた上で、改めてスーパーチョップス奏法を検証してみると、とても興味深い提唱であることも理解できるんですよね。
それでは、いよいよスーパーチョップス奏法の吹き方に言及してみましょう。
※前述したように、ジェローム・カレの教えを100%正確に伝えることは私にはムリです。
「だいたいこのようなコトを言ってる」ぐらいに解釈してください。
スーパーチョップス奏法のアンブシャ
スーパーチョップス奏法のアンブシャを作るにあたり、まず上記画像のような方向に唇の周りの筋肉をまとめます。
✖微笑み型のように口端を横に引っ張らない。(振動部分が薄くなり耐久性も劣り、音が痩せる)
✖口をつぼめて突き出さない。(振動部分が厚くなりコントロールが効きにくく、音がこもる)
●口端は自然のまま、唇の中心のアパチュアの部分に注力して力を集中する。
結果、下あごが膨らむ感じになるがこれは筋肉の力が入ってる状態で、空気が入ってるのでは無い。
でも皆さん、結果的にだいたいこのような形になっているのではないでしょうか?
しかし、スーパーチョップス奏法の特徴は他に大きなポイントがあります。
スーパーチョップス奏法の息の流れやスピード
スーパーチョップス奏法の息の流れやスピードは、腹にいっぱい息を溜め込む(吸い込む)スタイルではありません。
むしろ、みぞおち部分に注力しフレーズに必要な分だけのブレスをします。
また、息のスピードを意識して鋭く素早く放出するというより、唇で抵抗を調節します。
具体的には、ハイノートでは下唇が上歯の歯茎つけ根部分まで持ち上がります。
ありゃりゃ・・「息止ってしまうやん!?」という疑問があるでしょう。
しかし、そんなことはありません。
まず、トランペットの音は唇の振動により鳴ります。
息がマウスピースをを通し楽器内に突き抜ける必要はありません。
このポジショニングで息を圧縮し、抵抗をつけることにより、輝かしくハイノートはヒットしバテにくくピッチも安定する。
マウスピースを強くプレスする必要もありません。
そもそもハイトーンはたくさんの息はいらないのです。
(※これに関しては、現代に至っても多くの名ハイトーンプレイヤーが皆言ってますね。私もその通りだと思います)
スーパーチョップス奏法のシラブルとタンギング
スーパーチョップス奏法のシラブルポジションは、舌を決してアーチ状に持ち上げません。
通常(普段)は、下の歯裏側に緩やかに固定し、タンギングは舌先を歯と歯の間から唇中央に唾を吐くように触るべし。
あしたのジョー的に言うとこんな感じかな^^
以上、あくまで私が解釈するスーパーチョップス奏法のイメージでした。
しかし、最優先すべき奏法の要(かなめ)となるのはアンブシャより、ブレスコントロールだと私個人的には考えます。
まとめ:スーパーチョップス奏法の正しい解釈
いろいろ解説してきましたが、スーパーチョップス奏法の正しい解釈とはなんでしょう。
あらゆる奏法はトランペット奏法にとって「1つの定義」でしかありません。
前述の通り、第一人者たる愛弟子さんでさえも、本家の本当のキモを隙間なく100%伝えるのは非常に難しく失敗の連続です。
ただ、腹とブレスコントロールが出来てさえいれば極端な話、口の形(アンブシャ)は後についてきます。
おのずと口の形もできてきます。
このことは、現場でたくさんの素晴らしいトランぺッター達を目の当たりにして感じた、共通して断言できる奏法の原点と言えます。
そしてもう一つの事実。
何か新しいことに取り組む際には、数か月~1年単位でトレーニングを積み重ねないといけませんね。
トランペットは忍耐!
本日は以上になります。
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